スポーツマンシップ

講習会

スポーツマンシップとは?

スポーツはGame——

すなわち、スポーツは遊びであるというのが大前提です。


Good gameをめざして全力を尽くして愉しむことがスポーツの本質です。

プレーヤー(相手・仲間)、ルール、審判に対する尊重。


困難や危機を恐れず、自ら責任をもって決断・行動・挑戦する勇気。

勝利をめざして苦しい試練を耐え抜き、自ら全力を尽くして愉しむ覚悟。

これらがすべて備わることでGood gameが実現できます。

このようなスポーツの本質的な価値を理解し、

Good gameを実現する覚悟をもった人をスポーツマンと呼びます。

そして、スポーツマンに求められる

「Good gameを実現しようとする心構え」がスポーツマンシップです。

日本スポーツマンシップ協会HPより引用

スポーツマンシップ講習会を開催しました

東京インディペンデンツでは、「野球だけではない運営」や「豊かな社会性の育成」も活動の目的としています。その一環で、年に1回外部講師をお招きし講習会を開くこととしています。今回は、第1回として「スポーツマンシップ講習会」を2021年3月6日(土)に開催しました。

今回お招きしたのは、一般社団法人 日本スポーツマンシップ協会 代表理事の中村聡宏先生です。

中村先生は、2002年ワールドカップ招致活動に尽力するなどスポーツビジネスの第一人者であり、「スポーツマンシップ」の伝道師として知られる広瀬一郎氏の一番弟子というべき存在です。著書『スポーツマンシップバイブル』には「川淵三郎氏推薦!」という帯が巻かれており、多くのスポーツマンに愛読されています。あの筒香嘉智選手(タンパベイレイズ)もスポーツマンシップの大切さを唱えていることは記憶に新しいかと思いますが、筒香選手も『スポーツマンシップバイブル』を読み、中村先生のお話を聞き深く感銘を受けたそうです。

今回特別に、東京インディペンデンツ関係者とその関係者向けに、講演会を開催してくださりました。

東京インディペンデンツ第1回講習会 「スポーツマンシップについて考えよう」

東京インディペンデンツ第1回講習会「スポーツマンシップについて考えよう」の概要です。zoomでの講習会でした。


【主催】東京インディペンデンツ

【日時】2021年3月6日(土) 19:00~20:00(質疑応答含む)

【対象】東京インディペンデンツ選手、保護者、指導者および小中学生野球選手、保護者、指導者(参加費無料)

【定員】先着100名

【内容】「スポーツマンシップについて考えよう」

【講師】中村聡宏 先生 (一般社団法人 日本スポーツマンシップ協会 代表理事)

講義内容ダイジェスト

講義頂いた内容を、ダイジェストでまとめました。ぜひご覧ください。

質疑応答

講義後、個別の質疑応答にお答えいただきました。質問者、中村先生のご了承のもと、一部ご紹介させていただきます。

【質問】

スポーツが好きな人やスポーツをやっている人へスポーツマンシップを説明し、スポーツマンでありたいと思ってもらうことは、今日のご説明でとても腹落ちしましたが、スポーツに興味のない子供や、スポーツが苦手で好きじゃない子供達に対して、同じような価値を伝えていくためにどうしたらよいか、何かお考えがあれば教えていただきたくお願いします。例えば今日の話を聴いた選手が学校やクラスに帰った時、スポーツをしていないクラスメイトに対しても同じようなリスペクトを持ってもらいたいですし、逆にスポーツをしていない子供達にもgood fellowであって欲しいと願います。(指導者)

【解答】

※ご質問ありがとうございます。

たとえば、まずは大学生の場合でお話しいたしましょう。私が所属する千葉商科大学サービス創造学部は、スポーツ系の学部ではないので、部活をしている学生も決して多くありませんし、スポーツが好きな学生ばかりではありません。私が担当する「スポーツマンシップ論」という講義を履修する学生たちもスポーツが好きな学生ばかりではありません。それでも受講後には、「スポーツが好きになった」「見てみようと思った」「もっと早く知ってからスポーツをしたかった」「この話にはスポーツが好きかどうか、スポーツをしているかどうかは関係なく大切なこと」という学生たちの声が多いのが事実です。

 子どもたち同士でも、気持ちのいい子がいたら、「君はスポーツマンだね」という言葉をかけて、なぜスポーツマンと思ったのかを伝えていただくといいと思います。「信頼できるから」「嘘をつかないから」「いじめをしないから」「言動がかっこいいと思えるから」など理由は様々あると思います。

 もちろん、スポーツマン・スポーツマンシップという言葉にこだわる必要もないと覆います。言葉自体の意味をしているということ以上に、こういう考え方、行動力、コミュニケーションが大切なのであり、気持ちよく、かっこよく日常生活を送ることが重要なのだと思います。言動が変わった子どもに対して、周りの子どもたちの見る目もかわるはずです。

最初は恥ずかしくて照れくさいいかもしれませんが、笑顔で、「ありがとう」「かっこいいね」と声をかけるように心がけましょう。大人たちが率先してやっていきましょう。子どもたちは気持ちのいい大人たちの真似を率先してやるようになります。


以上、これらはあくまで一案です。もっともっと色々できることはあると思いますし、子どもたち一人ひとりに個性がありますので、子どもの数だけ対応する方法は色々あると思います。自ら考える子どもたちを育てていきたいですよね。だからこそ、私たち大人たちが、自ら色々と思考を巡らせることが大切だと思います。ぜひともに考えていきましょう。またもし、なにか悩みにぶつかったらぜひお気軽にご相談ください。より具体的に、なにかご質問位ただければ、より具体的なアイデアをお示しできるかもしれませんし、そのより具体的に考えて自分らしい答えを見つけていくところが指導者冥利に尽きる部分かもしれませんよね。お互いに励んでいきましょう!(中村先生)


【質問】

一般的に言われる「一流のアスリート」とスポーツマンシップを持ち合わせているアスリートには相関関係はあるものでしょうか?仮にあるとするならばその部分における因果関係は存在するものでしょうか?(指導者)

【解答】

※ご質問ありがとうございます。

教育の世界における成果などと同様、スポーツマンシップの理解や発揮と、競技成績との相関関係や因果関係などとしてエビデンスを明確にすることは非常に難しいです。

その一方で、一般的に言われる「一流のアスリート」とはどんな人のイメージですか?

一流のアスリート、だとどうかわかりませんが、少なくとも「超一流のアスリート」は、スポーツマンシップを持ち発揮していかないとたどり着かないように私は感じています。

野茂英雄、イチロー、松井秀喜、大谷翔平、ダルビッシュ有、田中将大、筒香嘉智……

また、その他のスポーツでも、大坂なおみ、小平奈緒、羽生結弦、伊調馨……などなど、世界でもトップを極めようとするようなアスリート、世界から高い評価を受け愛されるアスリートは、尊重・勇気・覚悟を持ち合わせています。彼らはスポーツマンシップを理論として学んだことはなかったかもしれませんが、それでも実際にスポーツを極めていく過程でスポーツマンシップを身につけ、発揮している人たちだと思っています。

アスリートは一人で強くなるものではありません。指導者、保護者などの身内はもちろん、関係者、ファン、スポンサー、メディア……などなど、さまざまな周囲の方から愛されることによって世界へと羽ばたき、そこで謙虚に学び続け、自らを律して成長し続け、勇気を持ってチャレンジし続け、逆風にも覚悟をもって立ち向かっていきます。

先にご紹介した筒香嘉智選手は、スポーツマンシップバイブルを読んでくださり「あらためて、スポーツマンシップが大切だと思っています」とおっしゃっています。

https://thedigestweb.com/baseball/detail/id=34216


亡くなった平尾誠二さん、ジーコさん、加藤久さん、松岡修造さんなど、スポーツマンシップの大切さを訴えているトップアスリートも少なくありません。侍ジャパンの監督である稲葉篤紀さんもインタビューをした際に、まさにスポーツマンシップの重要性を訴えていました。

強くなるためには、自分に嘘をつかないこと、自分を律すること、弱い自分に向き合うことは欠かせません。勇気と覚悟がものをいいます。「相手のことを思いやれば結果が出づらくなる」という人も言いますが、国内チャンピオンだったり、ドメスティックな競技だったり、多少強くても超一流とは言えない人たちばかりのように感じます。世界で堂々と渡り合えるような超一流のアスリートは、スポーツマンシップに溢れている人が多いように感じています。

以上、十分な答えにはなっていませんが、参考になれば幸いです。(中村先生)


【質問】

中村先生のお話とてもお上手で感激しました。スポーツ観戦が専らの親の私でもわかりやすかったです。ご本も購入させていただきました。息子の中のスポーツマンシップを育てるには、試合も練習も本人が経験し、本人が気づくしかないので、親としては見守るしかないでしょうか?(ちなみに息子は勝ちへの執着心が強いタイプです…)(保護者)

【解答】

※メッセージ・ご質問ならびに、書籍のご購入もありがとうございます。

勝利への執着心が強いことは、とてもいいことです。ここで重要なのは、「勝つ」という結果のみに執着するのではなく、勝利につながる「上達(過去の自分への勝利)」を実現するための工夫、自らの挑戦意欲、知識・理論の強化(=学び・研究)、ストイックにやり抜く覚悟などとセットで執着できるとよいということです。

これはスポーツをする上で(あるいは、これから人生を生きていく上でも)、非常に重要な考え方だと思います。自らが自らを鍛えていく、自らの成長に期待しながら努力する、その上で全力を尽くして結果を出すことにこだわっていく、ということです。


とはいえその一方で、先日もお話したように、スポーツという遊びの1試合ごとに、勝利という結果だけ執着しているのは、長い人生を俯瞰したときにはナンセンスでもあります。この両者のバランスが、「たかがスポーツ、されどスポーツ。」という言葉に集約されると思います。

尊重(自分以外を大切にする)・勇気(自分自身を大切にして自ら研鑽する)・覚悟(自分以外と自分自身のバランスを大切にしてあらゆる困難をも愉しみぬく)は、どれかひとつあればいいというわけでは全くなく、「三方良し」的に、全てのバランスを整えることが大切だと感じています。ですから、自分の苦手なパートがあればそれをできるように心がけていただきたいですね。


もしお子さんの執着が気になるようであれば、ぜひ、それ以外のことに目を向けられるような声がけをしてみてはいかがでしょうか。その声がけの際は、指示・命令するのではなく、繰り返し気づくように尋ねてみるのがいいと思います。

 結果だけにこだわってプロセスに目を向けられないのであれば、

「どんなことを感じている?」

「なんでそういう結果になったんだと思う?」

などと声をかけて、自らの次の行動を自分の言葉で引き出してあげられるといいかもしれません。

勝利至上主義に陥り、尊重が苦手な傾向が強いのであれば、相手のことを色々と聞いてあげるのもいいかもしれません。負けて悔しそうにしているのであれば、

「その相手はどんなところがよかったの?」

「自分はどこが足りなかったと感じるの?」

「どうしたら、次は勝てるようにできると思う?」

と尋ねるなどして、相手のいいところを自分の言葉で語れるように引き出すコミュニケーションも有効だと思います。

 これらはあくまで一例ですので、お子さんの性格や置かれている状況、普段のコミュニケーションのとり方によっても、ベストな声がけや方法はいろいろありえると思います。ぜひ、いろいろ試してみてください。より具体的に状況を教えていただければ、もう少しピントの合った具体的なアドバイスもできるかもしれません。

もしなにかお困りのことがあれば、またぜひお気軽にご相談ください。

(中村先生)