2025年4月フィリピン野球指導レポート
野球を通した日比友好事業に取り組むため、フィリピンで日本の野球プログラムを積極的に取り入れているSAMURAI財団と提携しています。
その一環で、2025年4月11~29日に、樺田コーチがフィリピンにて野球指導を行いました。そのレポートをご覧ください。
2025年4月、日本は春らしい肌寒さと雨の続く天候の中、フィリピンへと渡航しました。現地は一年で最も暑い時期にあたり、気温は連日36°C超え。出発時の日本との温度差は実に2倍以上と、身体への負担も懸念される環境でした。フィリピンの気候は一年中ほぼ夏。日本のような四季はなく、常に蒸し暑い空気が続きます。こうした気候の中、フィリピンの人々がどのように日常生活を送り、野球に取り組んでいるのか。暑さとの付き合い方を含め、文化や習慣も学びながら、現地の選手たちに技術指導を行いました。
空港に到着後は、事前に登録しておいたeTravelのQRコード提示で、入国審査・税関もスムーズに通過。警戒して準備していたことが拍子抜けするほど、あっさり入国できました。空港の外へ出た瞬間、全身を包むような熱気と湿気が襲ってきます。迎えに来てくれた運転手の車に乗り込むと、道中は日本車が非常に多く、特にトヨタ車が圧倒的でした。トヨタ、マツダ、三菱、ホンダなど、日本の自動車メーカーの信頼の高さを改めて感じました。ただし交通事情は日本と大きく異なり、クラクションが常に鳴り響き、割り込みやノーヘル運転は当たり前。歩道も整備されていない場所が多く、現地の人も基本は車移動。徒歩移動は危険で、必ず運転手を付けての移動が推奨されました。スラム街を抜けると高層ビルが立ち並ぶ街並みが現れ、その奥にはゲート付きの住宅街が続きます。貧困層と富裕層の生活圏がはっきりと分かれており、同じ都市内でもまるで別の国のような感覚でした。
3-1:競技としての立ち位置
フィリピンでは野球よりもバスケットボールの人気が圧倒的。街のあちこちにバスケのゴールがあり、バスケット専用のショップも多く見かけます。一方で、野球用品を取り扱う店舗はほぼ皆無。ローリングス製のフィリピン製品はあるものの、正規品はアメリカなど海外でしか販売されておらず、現地では偽物も出回っているため、道具の確保が大きな課題です。
3-2:選手のポテンシャルと課題
今回指導したのは、大学~小学生までの複数世代。中には中学時代にポニーフィリピン代表として国際大会に出場した経験を持つ選手もおり、身体能力や潜在力は非常に高い印象を受けました。しかし一方で、基本動作の理解や技術指導の機会は限られており、特にキャッチボールは「アップの一環」としてしか認識されていませんでした。試合で使える動作を意識させるだけでも動きに変化が見られ、指導の手応えを感じました。暑さの影響もあり、練習は1日3時間程度ですが、実質集中して取り組むのは2時間前後。練習テンポはゆったりしており、インディペンデンツのような「短期集中型の練習スタイル」は定着していませんでした。だからこそ、効率的な練習やテンポづくりが非常に重要になると感じました。また、捕手のフレーミングについては「審判をいかに納得させるか」が主な目的とされ、小手先の技術よりも“見せ方”が重視されている文化があります。
チーム関係者からは課題として「守備の基礎捕球・送球」や「細かな走塁技術」が不足していることが共有されており、ここに日本式の技術指導を導入することで、大きくレベルアップが期待できると感じています。ナショナルチームは通年で練習を行っており、プロリーグが存在しない現地では、こうした育成支援が組み込みやすい環境にあります。
フィリピン滞在を通じて、東南アジアでの「英語+野球」のキャンプ展開の可能性にも手応えを得ました。以下のようなプログラムが構想できます。
•対象:小中高生
•期間:春または冬5泊程度
•内容:英語学習、野球指導、異文化体験
•環境:送迎・宿泊・グラウンド完備、費用も欧米に比べて大幅に抑えられるアメリカやオーストラリアに比べて距離も近く、親日家が多く英語教育も充実しているため、教育的価値の高いプログラムになると考えています。
食事面では、日本では見かけないファストフード文化が多く、マクドナルドやジョリビーではライス付きのセットメニューが主流です。ジョリビーはアメリカでも高評価を受けているフィリピン発のブランドで、味・価格ともに非常に満足度が高く、食生活においても文化の違いを実感しました。ただし、外出時には治安面での注意が必要で、必ずドライバー付きでの移動が推奨されるなど、日本と比べて制約のある場面も多々ありました。
今回のフィリピン滞在を通じて、現地の野球環境、生活文化、教育体制を総合的に体験することができました。